これから迎える人生100年時代。
若い頃と同じように過ごせるならいいけれど、年齢を重ねることの心配や不安もあります。
ある時のピアノ教室でのひとこま。
大人の生徒さん(シニア世代)で、レッスンに来られたそうそうこのように話されました。
「もう何回練習しても、すぐに忘れる。これは認知症なのかしら?」
「もう数年続けているのに、全然上手にならない・・・もう年寄りだから仕方ないね・・」
と落ち込み気味。
そこでアドバイスしたのが
「もう歳だから・・認知症だから・・できない!上手になるわけがない・・
と言っていると、身体は正直だから、そのようにしか働いてくれないです。
少しずつでも上手になっている・少しだけでも覚えられた・・と言うと身体も機嫌がよくなってそう動くようになるから・・・」と伝えました。
するとその生徒さんは
「そういえば、そんなことを講演会で聞いたことがある。脳は賢いから、発する言葉を聞いて、そのように身体を動かす。だから、いい言葉を使うようにしましょう~と言っていたと。」
講演会などで、話を聞くと「そうか!そうか!」と納得し、いい話をきけてよかったとテンションが上がるけれど、それを日常生活や自身の身の上に、どうあてはめればいいかは、なかなかわからないものです。
そして「よし!わかった!これからは言葉に気をつけよう~」といったその足で
「これを10年前に聞けていたら、もっと上手になったのになぁ」というセリフがでたので
「それ!それ!」「今からでも上手になれるって言わないと~」と笑い。
そこで、気を取り直して、「使う言葉は癖になっているから気を付けないね・・」という話をして、雑談を少しした後・・・
「やっぱり歳とってから始めると、基礎がないからできないんやね」というセリフ。
「それ!それ!」「マイナスのイメージの根が深いなぁ~」とまたまた笑い。
ほんと思考回路ってなかなか書き変わらないから、相当の注意深さが必要になるんです。
思考の癖や、なにげに頭の中でつぶやいているセルフトーク・・・
もちろんこれらは、一回二回、思ったりつぶやいたりしたところで、すぐには現実化はしません。
でも、日に何回もとか、何年にもわたって同じようなことを考えたり、感じたりしていれば、だんだんとその言葉が自分の一部となり、エネルギーを持ち、本当に現実化してしまいます。
失敗するかも・・とか、失敗してはいけないと思えば思うほど、「失敗」というキーワードが脳にインプットされ、そうなるように事が進んでしまうことって本当にありますよね。
なぜなら、「成功したい」とか「成長しよう」などのポジティブな状況と、「失敗するかも」とか「まちがうわけにはいかない」などのネガティブな状況では、自分の身の安全(名誉とかプライドなど)が脅かされるかもしれない分、ネガティブな思考のエネルギー量が大きくなります。
だから、悲しいかな、マイナス・ネガティブなイメージほど現実化しやすくなってしまうんです。
そして次の時間のシニアの生徒さんがやってきて、「もう練習が進まない・・もうろくしてきたんだろうか・・・」というので「あなたもですか・・」とまた笑いに。
なにげなく使っている「セルフトーク」。
失敗したこと・忘れてしまうこと・覚えられないこと・動作のスピードが遅くなったこと・・・
いろいろなことに「認知症かも」「もう歳だから」「年とったから」などと言い訳に使うことがあります。
成長過程の幼児と比べればたしかにそうかもしれませんが、年齢のせいだけではない部分もかなりあります。
なかなか覚えられないとか、すぐ忘れてしまうことは、集中して行っていない・気がそぞろ・ある程度できていることに対しては、なあなあで行っている・・・
明確な意識がない感覚では、覚えも悪くなるし、重要な事柄でないとすれば忘れるのも早くなります。
子どもの頃は、知識も経験もないので、何かをする時は本当に一生懸命行います。
真剣に取り組む。だから、できるようになるし、覚えたことを忘れずにいられる。
一方で、年齢を重ねると、要らないことの思考が増える分、集中力も低下してしまいます。そのことが原因で、覚えが悪くなったり忘れやすくなったりしていることもあるのです。
これを「年齢」のせいで片付けてしまいがちですが、それが習慣になると弊害がおこります。
ひとつは、物事の一つ一つに真摯に取り組む力が低下してしまうこと。
もうひとつは身体が「年齢」に反応して能力をだしきらなくなること。
ですから、使う言葉には、本当に注意深くいないといけないのです。
これからの人生、健康で、できることの能力をできる限り低下させないで、むしろ、能力を向上させるぐらいのつもりで生きるなら、それを誘導するような言葉やセルフトークが必要です。
「昨日より上手になった」「この部分はできるようになってきた」「きっとうまくいく」そのような言葉が、無意識にでも口をついて出るようになるまで自分の使う言葉には慎重でいたいものです。
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